「マイクロバスなら普通免許で運転できるのでは?」と考える方は少なくありません。しかし実際には、マイクロバスの乗車定員によって必要な運転免許が変わり、免許制度自体も過去に複数回改正されているため、取得時期によって運転できる範囲が異なります。さらに、免許区分をクリアしていても、輸送の内容によっては運送事業の許可が別途必要になるケースもあり、「免許さえあれば自社の車両・社員で運転して問題ない」とは限りません。この記事では、運転免許の区分とマイクロバスの関係を整理したうえで、自社で運転手を用意する場合と、貸切バスを手配する場合のどちらが合っているかを比較します。
結論:マイクロバスの乗車定員によって必要な免許が変わる
マイクロバスという呼び方に法律上の明確な定義があるわけではなく、免許区分は車両の「乗車定員」と「車両総重量」によって決まります。一般に販売・レンタルされているマイクロバスは乗車定員20〜28人程度のものが多く、この人数帯は多くの場合「中型免許」が必要になります。「マイクロバス=普通免許で運転できる」というのは誤解であるケースが多いため、対象の車両の乗車定員を必ず確認する必要があります。乗車定員10人以下の普通免許で運転できるワゴン車は「マイクロバス」の分類ではありませんので、対象車両の乗車定員を個別確認することが重要です。
運転免許の車両区分と乗車定員の基準
現在の免許制度では、主に乗車定員をもとに次のように区分されています(車両総重量による基準もあわせて適用されるため、詳細は運転免許証の条件等欄や最新の法令でご確認ください)。
| 免許区分 | 運転できる乗車定員の目安 |
|---|---|
| 普通免許 | 10人以下 |
| 準中型免許 | 10人以下(主に貨物車向けの区分) |
| 中型免許 | 11人以上29人以下 |
| 大型免許 | 30人以上 |
普通免許で運転できる範囲
普通免許で運転できるのは、乗車定員10人以下の車両です。10人乗りのワゴン車などが該当し、一般的な「マイクロバス」として販売されている20人乗り以上の車両は対象外になります。
中型免許が必要になる範囲
乗車定員11人以上29人以下の車両を運転するには中型免許が必要です。マイクロバスの多くはこの人数帯に該当するため、「マイクロバスだから普通免許で足りる」と考えるのは危険です。
大型免許が必要になる範囲
乗車定員30人以上の車両(大型バスなど)を運転するには大型免許が必要です。マイクロバスとして扱われる車両で30人以上のケースは少ないですが、車種によっては該当することもあるため、定員の確認は欠かせません。
免許制度の変遷に注意(取得時期で運転できる範囲が違う)
運転免許の車両区分は、これまで複数回の法改正で見直されており、「いつ普通免許を取得したか」によって、実際に運転できる車両の範囲が異なります。同じ「普通免許」でも、取得時期が違う社員同士では運転できる車両が違う、というケースが起こり得ます。
| 普通免許の取得時期 | 運転できる範囲の考え方(目安) |
|---|---|
| 2007年6月1日以前に取得 | 「8t限定中型免許」に自動的に切り替わっており、車両総重量8t未満の車両まで運転できる場合がある(乗車定員の上限は一律10人以下) |
| 2007年6月2日〜2017年3月11日に取得 | 車両総重量5t未満・乗車定員10人以下が目安 |
| 2017年3月12日以降に取得 | 準中型免許新設後の現行制度が適用され、車両総重量3.5t未満・乗車定員10人以下が目安 |
このように、免許の取得時期によって適用される制度が異なるため、「普通免許を持っているから大丈夫」と自己判断せず、必ず運転免許証の条件等欄を確認するか、運転免許センター等の公的な窓口に問い合わせることをおすすめします。特に2007年6月1日以前に免許を取得した方は、乗車定員だけでなく車両総重量によって運転できる範囲が決まる「8t限定中型免許」という特殊な区分になっているため、対象車両のスペック表で乗車定員と車両総重量の両方を確認する必要があります。社内の複数の社員に運転を依頼する可能性がある場合は、候補者全員の免許証を早めに確認しておくと、直前になって「運転できる人がいない」という事態を防げます。
中型免許にも種類がある(8t限定中型免許との違い)
「中型免許」と一口に言っても、教習所等で新たに取得する通常の中型免許と、2007年の制度改正時に旧普通免許から自動的に切り替わった「8t限定中型免許」は、運転できる範囲が異なります。8t限定中型免許は名称の通り車両総重量8t未満という制限が付いており、通常の中型免許(車両総重量11t未満)よりも運転できる範囲が狭くなっています。8t限定中型免許では、乗車定員10人以下かつ車両総重量8t未満という両方の制限が適用されます。一般的なマイクロバス(乗車定員11人以上)は、車両総重量にかかわらず8t限定中型免許では運転できないため注意が必要です。
2026年4月、AT限定中型免許が新設
2026年4月1日の法改正により、中型免許・準中型免許・中型第二種免許の3区分において、新たにAT(オートマチック)車限定免許が導入されました。これにより、これから中型免許を取得する方の選択肢が広がりましたが、AT限定の場合は当然ながらMT(マニュアル)車のマイクロバス・中型バスは運転できません。自社で運転手を確保する際は、対象車両がAT車かMT車かも含めて確認が必要です。免許制度は今後も改正される可能性があるため、最新の情報は運転免許センター等の公的な窓口でご確認ください。
マイクロバスは何人乗りが多い?
一般的に「マイクロバス」として販売・レンタルされている車両の乗車定員は、24人乗りや28人乗りが主流ですが、これは補助席を含めた人数なので、正座席のみであれば20人ほどしか乗れません。また荷室がないタイプが多いため、荷物が多い場合には後方座席を荷物スペースとして使わざるを得ず、さらに乗車可能人数は減ると考えておきましょう。手配・購入を検討している車両の乗車定員を、車種カタログや販売店に必ず確認しましょう。
自社の運転手に運転してもらう場合の注意点
免許区分の確認
運転を依頼する社員全員の免許証の条件等欄を確認し、対象車両を運転できるかを事前に確認します。前述の通り、取得時期によって運転できる範囲が異なるため、「中型免許を持っている」という自己申告だけでなく、実際の免許証で条件を確認することが重要です。
運転経験・技能
免許上は運転できても、普段は乗用車しか運転していない社員が、いきなり大型の車両を運転するのはリスクを伴います。内輪差(カーブを曲がる際に後輪が前輪より内側を通る現象)や死角の大きさは、普通車とは大きく異なるため、安全講習や慣熟運転(実際のルートでの練習走行)の機会を設けることが望ましいでしょう。
疲労・休憩管理
長距離・長時間の運転では、運転者の疲労管理・休憩時間の確保が安全面で重要になります。プロの運行会社では法令に基づく休憩時間の管理体制が整っていますが、自社運転の場合はこの管理を自社で行う必要があり、運転者が1人しかいない場合は交代要員の確保も課題になります。
保険の確認
自社の任意保険が、業務での旅客輸送や対象の車両区分に対応した内容になっているかを確認します。従業員の送迎など日常的な用途を想定した保険と、イベント時の旅客輸送を想定した保険とでは、補償範囲が異なる場合があります。
免許以外に確認すべき点:白ナンバーでの運行可否
自社で車両を用意して運転する場合、運転免許の区分に加えて、運送事業の許可(ナンバープレートの区分)にも注意が必要です。自家用車と同じ「白ナンバー」の車両で有償の旅客輸送を行うことは、原則として法令上認められていません。自社の従業員を無償で送迎する範囲であれば白ナンバーでの運行が可能なケースが一般的ですが、参加費を徴収するイベントでの送迎や、外部の顧客・取引先を有償で輸送するようなケースでは、「緑ナンバー」の事業用車両(一般貸切旅客自動車運送事業などの許可を受けた運行会社)を利用する必要があります。自社運転を検討する際は、運転免許の区分だけでなく、今回の輸送が有償にあたらないかどうかも、必要に応じて運輸支局等に確認することをおすすめします。貸切バスを手配する場合は、運行会社側が必要な許可を取得済みのため、この点を利用者側で意識する必要はありません。
自社運転 vs 貸切バス手配の比較
| 比較項目 | 自社で運転する場合 | 貸切バスを手配する場合 |
|---|---|---|
| 必要な免許 | 対象人数に応じた免許を持つ社員の確保が必要 | 不要(運転手付きで手配) |
| 運送事業の許可 | 有償輸送にあたる場合は緑ナンバー等の許可が別途必要になることがある | 運行会社が許可を取得済みのため不要 |
| 運転者の負担 | 運転する社員は当日の企画・引率業務に専念できない | プロの運転手が担当するため、担当者は本来の業務に集中できる |
| 安全管理 | 自社内での安全講習・休憩管理の体制構築が必要 | 運行会社の安全管理体制・保険が整っている |
| 車両の確保 | 自社で車両を購入・保有する必要がある(または都度レンタル) | 利用のたびに手配するだけで済む |
| コスト構造 | 車両購入・維持費+運転手の人件費(自社負担) | 利用の都度発生する料金(車両維持の固定費なし) |
利用頻度が高く、決まったルートを日常的に運行する場合は自社保有・自社運転が向いているケースもありますが、年に数回程度のイベント・行事での利用であれば、免許確保や車両維持の負担がない貸切バスの手配のほうが、トータルでの負担を抑えられることが多くなります。
どちらが向いているか、利用シーン別の考え方
自社運転が検討候補になりやすいケース
毎日・毎週など高頻度で決まったルートを運行する送迎(工場の従業員送迎など)であれば、車両を自社保有し、対応免許を持つ運転手を確保したほうが、長期的なコストを抑えられる場合があります。ただし、この場合も運転手の休暇・退職時の代替要員の確保が課題になる点は変わりません。
貸切バス手配が向いているケース
社員旅行・研修・工場見学・周年イベントなど、年に数回程度の利用であれば、車両の保有・維持コストや、対応免許を持つ社員の確保・教育コストをかけるより、必要な時だけ貸切バスを手配するほうが合理的なケースが多くなります。特に参加者を乗せた移動では、運転手を務める社員が引率・進行に専念できないというデメリットも大きく、プロの運転手に任せることで当日の運営がスムーズになります。
判断に迷う場合の考え方
利用頻度が年数回〜十数回程度で判断に迷う場合は、まず自社運転にかかる総コスト(車両購入・維持費、免許取得支援費用、保険料、運転手の人件費・機会損失)を試算し、貸切バスを利用した場合の年間想定費用と比較してみることをおすすめします。車両の維持には車検・整備費用も継続的に発生するため、利用頻度が低いほど貸切バス手配側が有利になる傾向があります。
レンタカー(運転手なし)でマイクロバスを借りる場合の注意点
運転手なしでマイクロバスをレンタルする場合も、当然ながら運転する社員が対象車両に対応した免許を持っている必要があります。加えて、レンタカーの場合は次の点にも注意が必要です。
- 運転に不慣れな場合、大型車両特有の内輪差・死角の把握に時間がかかることがある
- 長距離運転による疲労は、運転する社員1人に集中してしまう(交代要員がいない場合)
- 事故が発生した場合の対応(相手方対応・保険手続きなど)を自社側で行う必要がある
特に参加者を乗せての移動では、運転する社員の負担と、乗客の安全確保の両方を考慮する必要があります。運転手付きの貸切バスであれば、これらの懸念を運行会社に任せることができます。なお、レンタカーとして借りる場合も、前述の運送事業の許可の考え方は変わりません。自社の運転手が運転する以上、有償の旅客輸送にあたるかどうかの確認は、車両を購入するか借りるかにかかわらず必要になります。
手配前に確認しておきたいチェックリスト
自社運転を検討する場合、次の項目をあらかじめ確認しておくと、直前になって「運転できない」「運行できない」という事態を防げます。
- 対象車両の乗車定員・車両総重量
- 運転予定者の運転免許証の条件等欄(区分・限定条件)
- 今回の輸送が有償にあたらないか(参加費徴収の有無を含む)
- 長距離・長時間運転の場合の交代要員の有無
- 業務での旅客輸送に対応した任意保険の加入状況
これらの項目のいずれかに不安がある場合は、無理に自社運転で進めず、運転手付きの貸切バスを手配することで、免許・許可・保険にまつわるリスクをまとめて回避できます。
よくある質問
乗車定員11人のマイクロバスは普通免許で運転できますか?
乗車定員11人の車両は、普通免許では運転できません。乗車定員11人以上29人以下の車両は中型免許の対象となります。
昔取得した普通免許なら、大きいマイクロバスも運転できると聞いたのですが本当ですか?
免許の取得時期によって、運転できる範囲に関する条件が異なる場合があります。実際に運転できる範囲は運転免許証の条件等欄に記載されているため、自己判断せず必ず確認してください。不明な場合は運転免許センター等の公的な窓口に問い合わせることをおすすめします。
中型免許を持っていれば、どんなマイクロバスでも運転できますか?
乗車定員29人以下であれば中型免許の範囲内ですが、30人以上の車両には大型免許が必要です。車両の乗車定員を確認したうえで、対応する免許区分を確認してください。
免許を持つ社員が退職・異動した場合に備えて、何か対策はありますか?
自社運転に依存していると、対応免許を持つ社員が不在になった際に運行自体ができなくなるリスクがあります。定期的な行事・移動であれば、貸切バスの手配先をあらかじめ確保しておくことで、こうした属人化のリスクを避けられます。
社員旅行の参加費を一部徴収する場合、自社の車両・社員運転手で送迎してもよいですか?
参加費の徴収方法や運行の実態によって判断が分かれるため、一律に「問題ない」とは言い切れません。有償の旅客輸送に該当するかどうかは、運輸支局等の公的な窓口に確認することをおすすめします。判断に迷う場合は、必要な許可を取得済みの貸切バスを手配するほうが確実です。
まとめ
マイクロバスは車種にもよりますが乗車定員20〜28人程度のものが主流で、この人数帯は中型免許が必要になります。「マイクロバスだから普通免許で運転できる」という思い込みは避け、対象車両の乗車定員と、運転者の免許証の条件等欄を必ず確認してください。免許制度自体も改正を重ねているため、取得時期による違いにも注意が必要です。さらに、有償の輸送にあたる場合は運送事業の許可も別途必要になるため、免許区分の確認だけで安心せず、輸送の内容全体を整理したうえで判断することが大切です。自社で運転手を確保する負担や、免許保有者が異動・退職した際のリスクを考えると、定期的な利用でなければ運転手付きの貸切バス手配のほうが、安全面・法令面・管理面のすべてでスムーズな選択肢になります。
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