「うわぁ…またバスか…。」
大学時代の友人との旅行が決まり、浮き立つ気持ちとは裏腹に、私の心は重かった。
なぜなら、私は筋金入りの乗り物酔い体質。
子供の頃からバスに乗るたびに、冷や汗と吐き気に襲われてきたのだ。
「せっかくの旅行なのに、バスでダウンしたらどうしよう…」
そんな不安を抱えながら、私は旅行代理店を訪れた。
窓口で対応してくれたのは、柔和な笑顔が印象的な女性スタッフだった。
旅行の計画を相談すると、彼女は私の顔色を曇らせ、一枚のパンフレットを差し出した。
「お客様、もしよろしければ、マイクロバスの旅はいかがでしょうか? 小人数でゆったりと移動できますし、観光スポットにも小回りよくアクセスできますよ。」
マイクロバス?
それは初耳だった。
「マイクロバスって…普通のバスと比べてどう違うんですか?」
恐る恐る尋ねると、彼女はにこやかに答えた。
「マイクロバスは、通常のバスよりも車体が小さく、小回りが利くのが特徴です。 また、ドライバーとの距離が近いので、安心感もあります。 そして、お客様のように乗り物酔いが心配な方には、特におすすめですよ。」
乗り物酔いしやすい人には特におすすめ…?
半信半疑ながらも、私はマイクロバスでの旅行を決めた。
そして、旅行当日。
初めて目にするマイクロバスは、想像していたよりもずっとスタイリッシュで、可愛らしい印象だった。
「あれ? 私が想像していたバスと違う…なんだか、これなら大丈夫な気がする…!」
緊張が少しだけ和らいだ。
マイクロバスに乗り込むと、そこには10人ほどの乗客の姿があった。
ほとんどが私と同じように、友人同士や家族連れで参加しているようだった。
私はドキドキしながら、空いている席を探した。
「えーっと、どの席に座ろうかな…」
すると、私の隣に腰を下ろした女性が、優しく声をかけてくれた。
「こんにちは。初めてマイクロバスに乗るんですか?」
彼女は、落ち着いた雰囲気の女性で、どうやら一人で参加しているらしい。
「はい、そうなんです。 実は私、かなり乗り物酔いしやすくて…」
そう打ち明けると、彼女は親しみを込めて微笑んだ。
「私も昔はそうだったんですよ。 でも、マイクロバスの ある席 に座るようになってから、全く酔わなくなりました。」
「ある席…?」
彼女の言葉に、私は興味津々だった。
「そう、魔法の席 です。」
彼女はいたずらっぽくウィンクすると、席を立ち上がり、バスの前方へと進んでいった。
「え、ちょ、ちょっと待って下さい!」
私は慌てて彼女の後を追いかけた。
元添乗員がこっそり教える! マイクロバスの「魔法の席」の秘密
「あの…魔法の席って、一体…?」
私が恐る恐る尋ねると、彼女はバスの前方、運転席のすぐ後ろの席を指差した。
「ここです。」
「え、ここ…?」
意外な答えに、私は思わず聞き返してしまった。
「運転席のすぐ後ろ…ってことは、一番揺れそうな気がするんですけど…。」
すると彼女は、私の不安を察したように、優しく説明してくれた。
「確かに、一見そう見えるかもしれませんね。でも、マイクロバスの場合は、ここが一番揺れにくいんです。」
彼女は続けた。
「マイクロバスは、車体が小さい分、カーブや発進・停車の際に、どうしても揺れが生じやすくなります。 特に、後方の席ほど、その揺れを大きく感じてしまうんです。
逆に、運転席の真後ろは、車体の重心に近い位置にあるため、他の席に比べて揺れが少なく、安定しているんですよ。」
「な、なるほど…!」
彼女の言葉に、私は深く頷いた。
今まで、バスに乗る時は、何も考えずに空いている席に座っていた。
しかし、席の位置によって、こんなにも乗り心地が違うなんて…。
「それに、ここなら視界も広くて、景色も楽しめますよ。景色を眺めていると、酔いにくくなるって言うでしょう?」
彼女は満面の笑みを浮かべて、窓の外を指差した。
「本当だ…! 視界が全然違う…!」
運転席のすぐ後ろの席は、視界を遮るものがなく、まるで展望台にいるかのように、景色を一望できる最高のロケーションだった。
「マイクロバスは、車体が小さい分、景色が近くに感じられますし、小道に入れば、まるで森の中を走り抜けているような、特別な体験もできます。 この席に座れば、そんなマイクロバスの旅の魅力を、最大限に味わえますよ。」
彼女の言葉に、私の心はすっかり晴れやかになっていた。
「ありがとうございます! もう、バスに乗るのが怖くなくなりました!」
私は満面の笑みを浮かべて、彼女に感謝の気持ちを伝えた。
まとめ|マイクロバスの旅を快適にする魔法の席
マイクロバスの旅を快適にするには、席選びが重要です。
特に、乗り物酔いしやすい方は、運転席のすぐ後ろの席がおすすめです。
揺れが少なく、景色も楽しめる、まさに「魔法の席」と言えるでしょう。
次回、マイクロバスに乗る機会があれば、ぜひ「魔法の席」を体験してみてください。
きっと、今までとは違う、快適なバス旅を楽しめるはずです。